もくじ
・『スキタイの侵略者』の簡単な説明
・こんな感じのゲームです
・感想など
『スキタイの侵略者』の簡単な説明
1~4人用。プレイ時間60分~80分。この記事を書いている時点のBGGではまだベストプレイ人数が定まっていません。何人でも楽しいようで票が割れています。
ルール難易度は普通。「北海の侵略者」というゲームを拡張込みで再構築したリメイク作です。
「スキタイの侵略者」でプレイヤーは、古代のペルシアやギリシャといった強大な帝国を襲撃しては恐怖のどん底に叩き込んでいた伝説の蛮族「スキタイ」の英雄となります。周辺国家を手当たり次第に襲撃・侵略して、各地で手に入れた戦利品を族長に献上することで勝利点を競います。
個人的な好みもありますがアートワークが素晴らしいです。ゲーム内容は見た目の重厚さとは異なりルールの難易度もプレイに必要な時間も中量級です。とっつきやすくて面白い、とても良いゲームだと思います。
カードに言語依存があります。日本語版が出ていますので、そちらをオススメします。
こんな感じのゲームです
基本的にはワーカープレイスメントですが、いくつか特徴があります。
まずラウンド制ではないので手番を交互に繰り返してゲーム終了まで一気に行くゲームです。
それから一般的なワカプレとは違い、プレイヤーカラーのワーカーというものは無いです。ラウンドがないのでワーカーが手元に帰ってくるフェイズもないです。常に手元にはワーカーは一つだけ。
まずワーカーをメインボードに置いて1アクション、メインボードからワーカーを拾って1アクションという少し変則的な手番アクションが特徴です。
青、灰、赤の3色あるワーカーの色によってボード上で選べるアクションや効果に差が出るようになっています。
最初から持っている青ワーカーは、お金は稼げますが動物を買いに行ったり族長に会いに行ったりはできません。なんとかして灰色や赤色ワーカーと交換しなければ勝利点を得ることができません。
どうすれば灰色や赤いワーカーを手に入れられるか。侵略です。
青ワーカーを近隣諸国に置いて集落を襲撃して略奪することで、そこにいる灰色や赤色のワーカーを代わりに手元に置くことができます。
メインボードの一番上が自分たちの村で、ここで金や食料を受け取るようなワーカーアクションをします。
村の下はすべて襲撃すべき国々で、下に行くにしたがって襲撃にコストがかかるようになります。
それぞれの国と集落には襲撃に必要なワーカーの色などの条件が書いてあります。それらを満たしていれば略奪できます。
色違いのワーカーと、金や荷馬車、家畜などを略奪して帰りましょう。襲撃に使ったワーカーはそのままゲーム終了時まで置いたままになります。
襲撃した集落の戦利品タイルが表になったら、どのプレイヤーでもタイルに書いてある物品を支払うことでタイルを取ることができます。早取りなので襲撃したプレイヤーが戦利品タイルを取れないこともあります。
手札となるカードもあり、プレイヤーの化身となる英雄はそれぞれ能力が異なります。
同胞はお金で雇うことで手元のボードにプレイすることができます。同胞にはそれぞれ戦闘力兼体力値があり、略奪の際の勝利点に関係します。
略奪の際にはダイスを振るのですが、この出目によっては負傷したり死亡したりすることがあります。
ペルシアやギリシアなどの遠くの強大な国に襲撃をかけるとなると、ダイスもかなり危険なものになります。
馬や鷲を買うことで戦闘力や能力にプラス修正がついたり、馬乳酒を飲むことで怪我を治したりする細かなルールはありますが、基本的には村で準備を整えて他国を侵略して勝利点を得るゲームです。
侵略できる場所が残り2つになったらゲーム終了です。
感想など
見た目は重い3時間級ゲームだったので初回はメインボードのセッティングなどしながら長期戦の覚悟をしていたのですが、実際は1時間ちょっとで終わる中量級ゲームでした。そして満足度が非常に高かったです。
ワーカーや食料、馬乳酒トークンなどが他であまり見たことがない独自の形だったり、統一感のある美しい色どりのアートワークといい、デザイン的に素晴らしいゲームだと思います。
ゲーム内でやる事と言えば略奪か、村にいるなら酒盛りや人身売買くらいなのでザ・蛮族という感じのひどい内容です。これは当然ながら誉め言葉です。
村の市場では手札のいらない同胞カードを捨てることで銀2枚を得るのですが、普通こういうゲームの市場って食料と金を交換したりすると思うのです。たぶんこれ人を売っ払って銀にしてますよね。
村の族長のテントを訪問すると、家畜(もちろん略奪して連れてきたやつ)を手土産に渡すことで食料と馬乳酒を頂けます。これ族長に略奪の戦利品を献上してお褒めに預かったってことですよね。ごくろうだったまぁ飲んで食えガハハという感じ。
すべてそんな感じで古代蛮族の生活を堪能できるステキゲームなのです。
実際スキタイのことなんか何も知らなかったので、少し本で調べてみたらすごいこと書いてありましたよ。
「スキタイ人は最初に殺した敵の血を飲む。また戦場で倒した敵の頭皮は全て族長のもとへ持参する。自分の馬の鞍にその頭皮をぶら下げてその数を誇るのである。~中略~ また敵兵から剥いだ皮で衣類を作る者も珍しくない、矢筒なども作る。~中略~ 特に憎い敵の頭蓋は盃にして用いる。~中略~ 戦の後の宴では戦場で敵を倒した者だけが酒を飲むことを許される。戦場で手柄を立てなかったものは恥辱を忍んで離れた席に座っている。これがスキタイ人にとっては最大の恥辱である。」
ヘロドトス 「歴史」中巻64段
メチャクチャ蛮族でした。ただ、女性キャラのカードが大量にあるのですが、スキタイでは本当に女性が軍人として普通に格差なく参加していたらしいです。有名な「アマゾン」という女性戦闘部族が歴史的に関係していることも「歴史」に書いてありました。そのへんも面白いですね。
ゲームプレイに関しては、ワーカーを置いて1アクション、すでに置いてあるワーカーを取って1アクションというのが斬新かつ歯がゆくて良かったです。2回アクションができるのですが、どうしても前の手番のプレイヤーが置いたアクションを先にやりたいのに、まずはワーカーを置く方が先と決まっているので上手くいかない事が多々あります。相手のやりたいことを予測して邪魔をすることが可能なので、対人インタラクションらしいものが無さそうに見えるシステムなのにかなり露骨な邪魔ができます。
また、略奪が勝利点を稼ぐ手っ取り早い方法ではありますが、略奪に行ったプレイヤーが苦労して負傷してまで表向きにした戦利品タイルを、次の手番プレイヤーにあっさり取られ、しかもタイルの勝利点の方が略奪の点より高いなんてことも頻繁に起こります。
食料と馬乳酒の重要さに気が付いたのはゲーム終了間近になってからでした。食料と馬乳酒は計算高く用意しないと最後の手番にギリシアへ略奪に行けません。もっとも遠くコストの高いギリシアへはおそらくゲーム中一回か二回しか略奪に行けないので、ギリシア行きの回数に差が付くとかなりの点差になるはずです。
馬乳酒を消費して治療することに3手番くらい使ってしまうくらいなら、怪我した同胞を捨てて新しく雇用する方がたぶん効率が良いのです。普通なら唾棄すべき手法かもしれませんが、蛮族的なのでこのゲームではむしろ推奨すらされるでしょう。死んだときに勝利点を得るような同胞すらいます。
実際に、初回プレイ時は最後のギリシア襲撃で死んだ同胞が黄金を残してくれたおかげで勝利点2点差で勝ちました。バランスが良いゲームなので勝利点1点が大きいと思います。
「2つ残しになる最後の集落を襲撃する」というゲームの終了トリガーを引いたプレイヤーが最後の手番をおこなえるので、どのタイミングでゲームを終わらせるかの駆け引きも熱いです。計画的なワカプレの運用はチェスや将棋的ですが、負傷要素や戦利品タイルの支払い条件は運が絡むので長考して煮詰まることもなく楽しく遊ぶことができました。
「北海の侵略者」を拡張入れた状態からブラッシュアップしてリメイクした作品という事で、すごく整理されたルールだと感じます。余計だと思うようなこともほぼなく、運と思考のバランスも良く、理解しやすく短時間でしっかり楽しめるワーカプレイスメントゲームとして広い層にオススメできると思います。内容は蛮族ですが血生臭さは感じないアートワークです。ぜひ遊んでみてください。