もくじ
『シャーロック・ホームズ 10の怪事件』の簡単な説明
こんな感じのゲームです
感想など


『シャーロック・ホームズ 10の怪事件』の簡単な説明

1~8人用。プレイ時間60分~120分。この記事を書いている時点のBGGではなぜか2人プレイがベストとなっています。
ルール難易度は普通。発売から40年近く経ているのにBGGランキングで100位前後に入っています。僕のオールタイムベストのひとつです。

プレイヤーは名探偵ホームズの有能な助力者です。このゲームではホームズが別の事件で忙しい間に頼まれた10個の事件をホームズの代理で捜査をします。それぞれの事件には設問があり、事件が解決したと思ったらホームズに挑んで答え合わせをしましょう。ちなみにこのゲームはシリーズになっていて、これはシリーズの1作目です。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
ロンドン地図と住所録、新聞や情報源手帳など

1人で遊ぶものだと思っていましたが、案外2~3人で遊んでも面白かったです。とはいえ8人プレイは無理があると思うので1人か2人をお勧めします。

ほぼ本なので海外版は厳しいと思います。絶版ですが中古市場では日本語版をよく見かけます。


こんな感じのゲームです

このゲームは基本的には本です。
本体の本以外には番地が書いてあるロンドンの地図、名前と住所が大量に載っている住所録、各事件当日の新聞がそれぞれ本の裏表紙に張り付けてある封筒に入っています。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
住所録や地図を駆使して捜査する

ゲームの流れはこうです。

1、事件のあらましをホームズから聞く。
本にそれぞれの事件ごとの導入部が短編小説のような形で書いてあります。ホームズは別の事件や何かの用事で忙しいので、ホームズに時間ができるまで捜査をしておいてほしいと頼まれる形でスタートします。

2、捜査する。
事件現場の住所へ聞き込みへ行ったり、目撃者の証言を取りに行ったり、事件当日や過去の新聞のあやしい所を調べたり、裁判所や新聞社へ行ったりします。これらは全て、本に書いてある住所の該当する番地のページを読むことで行います。
(例:誰かの証言に出てきたキオー氏という人物について調べたい場合、住所録でキオー性の住所を調べ、サウスイースト(SE)地区18番地などと確認できたら家に聞き込みに行く。本の18 SEのページを読む)

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
サウスイースト地区の18番地へ聞き込みへ行くなら「18 SE」のページを読む

3、事件の全容がわかったと思ったら、各事件の設問に挑戦する。
問題は複数あり、犯人は誰か動機は何かなどに答えます。全てに答えたら巻末のホームズの答え合わせを読みましょう。


感想など

このゲーム、すごく入手が困難な時期がありシャーロッキアン垂涎の一冊でした。このシリーズ1作目は子供の頃に偶然購入していて、子供には難しかったので何十年も忘れていたのを後年発掘。素晴らしい内容に大興奮して遊んだのでした。今は中古で入手しやすくなったこともあり、シリーズ3作目まで購入してあります。

ゲームブックのようなものなのですが「右へ行くなら15ページへ、左へ行くなら142ページへ行け」というようなシステムではありません。本の中身は事件のあらましと問題、答え合わせ以外の部分は(つまり本全体の9割くらいは)住所とそこを訪れた時の出来事が書いてあるだけです。そして、訪れられる場所のページを片っ端から読んだとしても、どこかのページに犯人がズバリ明記されているわけではないのです。
どう捜査するかと言うと、複数の証言や証拠から誰かの証言の矛盾をみつけたり、動機の裏づけなどをしつつロンドン中を足で捜査するのです。本当の意味での推理力が必要です。
このゲーム子供には難しすぎました。そして大人になったら楽しすぎました。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
住所録の中身。本当にただの住所録だが捜査に必須。

時代考証やホームズ作品の登場人物や設定などがファンも納得のレベルでしっかり作り込まれているので、意外なところで知っている名前に出くわしたりします。挿絵も正典(コナン・ドイルの書いたホームズ小説60作品を他作家の二次創作と区別して正典・聖典と呼びます)のような雰囲気があり、文句なしです。ロンドンの地図をテーブルに広げて捜査を始めれば、すぐに19世紀ビクトリア朝ロンドンの雰囲気にどっぷり浸れます。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
答えは袋とじの中に書いてある

ゲームとしても楽しいもので、こんなに本当の推理をさせられるゲームは他にあまり知りません。僕はプレイするときに大き目のホワイトボードにあらゆる証言・証拠をメモして紐づけして遊んでいます。刑事ドラマで見るようなアレで、すごく便利かつ雰囲気も出るのでオススメです。地図とにらめっこしてA地点からB地点へ馬車だと何分というような計算もするので、地図は壁に張り付けて定規をぶら下げていました。

あらゆる場所へ行って捜査をしたのにぜんぜん捜査の糸口がない時は、その事件よりずっと前の日付の新聞にヒントが隠されていたりします。第1の事件では全然意味のなかった事件当日の新聞広告が、第3の事件には意味のある内容だったりするのです。捜査に行き詰って唸りながら新聞をペラペラめくっていて突然「あっ!ずっと前の新聞に庭師募集してる人がいる!しかもSE地区だ!こいつに話を聞きに行ってみよう」となるのです。もうアハ体験の塊です。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
タイムズ新聞は素晴らしく役に立つ、こともある

問題はすごく難しい物もあり、事件と関係ないようなことまで聞かれることもあるので完全正解は無理かもしれません。とはいえ犯人と動機くらいがわかれば推理自体が楽しいので大満足すると思います。最後にホームズの答え合わせを読んで、その完璧すぎる探偵力にひれ伏してゲーム終了します。正しいホームズのゲームとはこれだと思ったものです。僕は自分がホームズとなってプレイするゲームでは、彼の神がかり的な部分をいまいち味わえないと思っているのです。

実を言うとこのゲーム3部作持っていますが、もったいなくてまだクリアしていません。次の事件はどこかのホテルに泊まってやろうと思っているのです。暖炉があれば最高です。森の中の陰気な洋館ホテルであればなお良し。プレイするためにこんなにお膳立てしたくなるゲームを他に知りません。個人的には最も優れたホームズゲームだと思っています。

シャーロック・ホームズ 10の怪事件
初版だった。巻末の広告が時代を感じさせる。「暗黒城の魔術師」持ってたなぁ。

これでもかと誉めちぎってますが万人受けするゲームではないと思います。ホームズファンか、少なくとも推理好きでなければ楽しめないようなゲームかもしれません。と言うかこんなゲームを買うのはよほどの推理ゲーム好きかシャーロッキアンしかいないのでそれで良いのです。ここを読んでいるくらいだから、あなたもきっとそうでしょう。ベーカー街221Bで会いましょう。